ティラミス
そんな、ティラミス事件の犯人が分かったのは見つかったメモが十枚目に達したときだった。
「紅茶豆乳が美味しくない」
十枚目のメモにはそう書いてあった。
今夜は豆乳鍋にしようかな、なんて思っていたら、後ろから声をかけられた。
「犯人、いつまで放っておくつもりですか?」
後ろからかけられた声に振り向けば、赤チェックのマフラーを巻いた男の子が立っていた。
制服を着ているので、高校生なのだろう。
まばらに切られた前髪からのぞくパチリとした目は、不思議と純粋さを感じた。
「別に、面白いから放っておいてもいいかなって。」
私がそう言えば、男の子はピクリと眉を動かした。
「テキトーじゃないですか。」
「悪質じゃないからいいんじゃない?」
むしろ私が毎日の食事を考える手間が省けて助かっているといってもいい。
本からメモを抜き取り棚に戻す。
しかし、話はまだ終わっていないのか男の子はそこにいた。