ティラミス



「犯人、俺なんです。」

「あ、そう。」

「なんで何も言わないんですか。俺が犯人だって分かってたんでしょう?」

「さぁね。」


実際は、男の子の言う通りだった。
メモが挟まっていた本は全て返却口に入っていたものだ。
つまり、その本を借りたのが誰かを調べればすぐに犯人は分かった。
ただ、そんなことを咎めるのもめんどくさいから黙っていただけだ。

私は黙ってどんどん本を棚に戻し整理していく。


「名前、教えてください。」

「……。」

「俺の名前知ってるんでしょ、あなた。俺は知らない。不公平です。」


勿論、私はメモを本に挟んだ犯人は誰かとっくに調べていたので男の子の名前は知っている。

滝沢樹。
彼の名前は滝沢樹だったはずだ。

はぁ、と小さく溜息を漏らす。

滝沢樹は未だに私のことをじっと見つめていた。


「石井慧海。」


一言、私がそう言えば滝沢樹がダランと下げていた手でガッツポーズをしたのが見えた。

隠しているつもりだったのだろうが、バレバレだ。



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