夢写(MUSHA)
♯5 ウチの家庭訪問があるわけない(後編 )
父と剛田!!

ごおおおおおお!

父と剛田先生の間に黒い渦が出現する…

父よ!!その人は先生や!

先生!!似顔絵とは違うけど…父なんです!ほんとに!!

…父と剛田先生とのやりとりを見続けた

しゃむ!!ゴリ男をかばうのか?!お前はまだ嫁には出さん!

ゴリ男ですか…言ってくれますね…あなたこそ不法侵入者ですよね?!
立花!脅されてるんだろ?!大丈夫だ!先生が助けてやる!

先生だと?助けるだと?!わしの娘を…お金で助けるのか?!犯罪やなぁ…ゴリ男が!

何を言ってるんですか?
そんなはずないでしょ…そのへんのゴミ屑と一緒にしないで下さいよ。

ゴミ屑はお前だろう?!朝から他人の家に来て、娘を連れ去ろうとは!
こうなったら仕方ない

…そうですね、あなたが立花のお父さんとは思えませんから


家の中の道場に行く二人…最悪や、学校にも行けなくなる

ごおおおおおお!!

二人の間に渦ができる…闇の中に引きずり込まれそうなほど…

ゴリ男!!

偽物め!!


ドン!!!!!!!


ん?!こやつできるな…


うっ、なんだこのマウンテンのような体の重さは…動かない


剛田先生のタックルを父は正面から受け止める

ほほう、動いてないぞ
ゴリよ!

なに!立花!!すぐに助けてやるからな!!
この化け物が!!

…父はハンドポケットのまま前進
…剛田先生はタックルしたままで後ろに押されてる

剛田先生がじわじわと押してくる父の重みを利用して…投げの大勢にはいる!!

父!!






動かない…。
この男なんだ…

ゴリよ…まぉまぁやるが力だけのようだな…

父が剛田先生の襟を持って持ち上げる…

この男!クレーン車か!!

剛田先生の巨漢が持ち上がる…

ん?!


剛田先生は父の手を取りそのまま締め上げる

ゴリよ…絞め技とは

父は立ったまま…剛田先生は赤ん坊が腕にしがみつくように…

くぅ…この男、化物か!

父が腕を回す…

ブンブン

ブンブン…


風が!!!

…嘘やん。。なんやこれ!


竜巻!!!!

天井に昇る竜巻!!

父よ!!家が壊れる!!!

ウチは止めに入る!

しゃむよ!男の戦いに口を出すな!!

(この道場が壊れたら…借金が増えるし母が戻ってこない…!! )

畳が強風で浮く…

ウチの体も浮いてる…
父はやはりこの世のものではないのか!

ここは先生を助けよう…

ウチは筆をとり髪を結う!!

余裕の父にプナッシングを投げつけた…

父の意識は飛んでるのに…体は動いている

先生の体がすさまじいGで曲がって見える

とりあえず父の意識はない…

入れるか…

父の夢の中に…



…真っ暗?

へ?ふぇ??

空や!ありえん!!
空っぽとかありえん!!

そのとき…光が

菩薩の父が現れる

ふぇ??

しゃむよ…帰りなさい。



ふぇ??菩薩?!

ウチは現実に戻されていた…そんなばかな…紙は白紙

目の前には、菩薩じゃなく暴れる悪魔がいた

ダメやー!家がきょわれるー!!!




?!

ガラガラ…

誰か入ってくる…?!



ただいまぁ!

お母さん!!

あらあら、竜巻発生ってニュースになってるわよ…うふふ

あなた!!!

父がこっちを見る!

青冷めた父の顔をはじめて見た…

お母さん!近づいちゃダメや!

…え?!

ボフ!!!!!

母が父に…ボディーブローを…

うぐふっっ!!!

…父はその場に倒れこんで、剛田先生もまた目を回して倒れた…

お母さん?!今のなに?

ん?しゃむ?少し触っただけよ?ここが壊れたら困るからね…

…点点点や

怪物は父だけじゃなかったのかい?!

しゃむ、ゴリ田先生の夢に入って今の記憶消しなさい…

(剛田だよ… )

剛田先生の夢…怪物となった父と戦っている…

ふぇーー!!!!
描く…!!

ふぇーー!!!!

回転が多いコマ数が多いんだよ!




ふぅ…終わった
これで剛田先生の中の父の記憶はなくなったはずだ

…母が剛田先生のところに

はじめまして、立花紗結の母です。

( 父は山に芝刈りに行かされた…
剛田先生はどうしてこんなところに…
という表情だったが母の巧みな話術で家庭訪問という本来の目的を思い出した… )


あの、何か怪物と戦っていた記憶があるのですが

気のせいですよ、それより今日は先生どうしていらっしゃったのですか?

はい…家庭訪問で

家庭訪問?!

…うふふ
それはみんなですか?

母よ…それ以上はやめてくれ

いえ…このままでは進級できなくなりそうなので、個別訪問です

しゃむ…どういうこと??

ふぁい…あのえのあのえのあの

しゃむ!!

まあまあお母さん!!
そんなに…

ゴリ田先生は黙っていて下さい!

ゴ…?剛田です。

失礼。

( 剛田先生からは学校を休まないこと、試験を受けること、部活でもはいるとどうか…って話で終わった。 )

失礼しました!

いえいえ、ゴリ田先生またいらしてくださいね!

…いえ…もう…はい。立花!学校でな!

ふぁい…。。。



玄関では沈黙が続いた…

半刻して母が

また来るわ!うふふ!

そう言って帰って行った

疲れた…おしとやかな母のイメージが少し消えた、あの父にして…か

それにしても父の夢に入ったのに何やったんや

…たでーま!

父よ!帰ったか!

ゴリラとあいつは?

母は帰った…。
ゴリラは先生だよ…

まだ言うか…!!
まぁいい、しゃむワシの夢に入ったな

うん。

何を見た…お前はワシの夢で何を見たのか!!
数々の伝説を見たか?

うん。すごかったよ…海賊に山賊に
(空だったとは言えなかった… )

どうした?父をそんな哀れな目で見おって!

…いや、大丈夫や



そうだ、お前はワシが菩薩になってるのを見たか?

え?

…見た。

夢写師は夢の中で見て描いたものを描き出せる。
描いたものは描かれた人の記憶から抜かれる。恐怖や寂しさ…感情をも抜いてしまう力を持つ。わかるな?

うん。

恐怖や寂しさは不必要か?
ワシはそうは思わん。それは時に人にとってブレーキを踏ませたり立ち止まらせる…本来は自分で克服していくものだとは思わんか?

( …なんや、父が真面目に話してる )

一時の迷いも時に大切な階段かもしれぬのだよ。
恐怖から逃げることも決断として大切な時もある。歴史の中で恐れを描かせて忘れさせ…恐れを失ったものは戦場で散ったよ…。
寂しさを描かせたものは、喜びさえも薄くなった。
ワシらには断ることはできないが一つ覚えておけ、その力は使い方によっては生きる気力さえも奪える。
だから、それを止める力も存在する。
お前が見た空っぽの夢はそんなとこだ


え??父よ!わかってたのか?


当たり前だろ…夢写師が夢を描かれては困るからな…お前はまだまだ修行が足りぬ!

ふぁい!!

(父はほんとはすごい人なのかもしれない )

あぁ…しゃむ!そう言えば、道場!

ふぁひ??

道場の修理よろしく!

はぉ??はぉ??
はお?

自分で壊していて!!
危うく勘違いするところやったわ!



道場はあのあとマスコミが家の前に来て、民家を襲う突如発生した竜巻として報道された…

おかげで寄付が集まって綺麗に修復してもらえた。

…夢を描かせない力か…他に夢写がいるとして乱用していたらいつかウチの前にも来るのかな…

ウチの他にはいないはずなのにどうして父はあんなことを言ったんや…



(しゃむはそれが近いことをまだ知らないでいた)


(ウチの家庭訪問があるわけない編 完)


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