キャラメル☆ハニー
1
中学3年の春。
また桜の季節がやってきた。
「百合子、これ出しといて?」
「何、これ」
「この間の改定案」
唯一の友で同じ生徒会の書記である柏木 圭子から差し出されたのは、先週までに欲しかった書類。
「……圭子…」
「ごめんごめん!
部活見学やらで忙しくてさ、忘れてたんだよね〜」
ははっと、全く悪びれるそぶりもなく栗色のショートの髪をフワフワさせながら笑う彼女に、溜息しか出なかった。
「これ、三田君ずっと欲しがってたのよ?」
「えー?私に何も言わなかったよ?」
「……聞いてた。圭子に持ってるか聞いたけど、『あたしが持ってるわけない』って言い切ってたの」
「嘘!」
「嘘じゃない。
……仕方ないから今渡してくるわ」
「えーっ アイツすごい怒りそう!」
「少しは怒られなさい」
うぇーって顔を歪めて嫌がる圭子に溜め息。
……三田君に同情するわ。
.