雪降る月夜に
不安になって、アラン様の服の端っこをぎゅっと掴む。

ワクワクした気持が一息に沈み込んでしまった。

駄目ならすぐにお返ししないと・・・。



「あぁ、すまぬ―――・・大変君らしく愛らしいゆえ、声を失っておった。これは、何というものだ?」


服を掴むわたしの手をゆっくり解いたアラン様は、「大丈夫だ。違反などしておらぬ。その様な顔をするな」囁くようにそう言って、指先に唇を落として微笑んでくれた。

そのあとソファに座って、ツリーを眺めながら故郷でのクリスマスのことをたくさんお話した。


アラン様はときどき相槌をうちながらお話を聞いてくれて、何かしたいことがあれば、君の出来る範囲で自由にすれば良い、と言ってくれた。

やっぱり、アラン様は優しい・・・。

リックさんにも見せる約束をしてることを伝えると、リックか・・・と呟いたあとに、額と髪に何度も唇が落とされた。



「アラン様・・?」

「・・・君には、分からぬだろうな」

「・・・はい?」

「いや、何でもない・・・この木、執務室に置きたいのだが、良いか?」

「ぇ―――これを、ですか?」

「そうだ。数日の間だけだ。リックにはそこで見せれば良いゆえ・・駄目か?」



ちょっぴり遠慮がちなアラン様。

意外なお願いにとても驚いたけれど、もちろん喜んで承諾した―――



―――翌朝に、ウォルターさんの手によって執務室まで運ばれたツリー。

あの時は数日で返してくれると言っていたけれど、ちっとも戻ってこない。

アラン様は、とても気に入ってくれたみたい。

苦労して作って良かった。

整然とした執務室の何処に飾ってくれてるのかしら。

兵士さん達は驚いてるわよね、きっと。

怖い雰囲気のアラン様にはとても似合わない可愛さだもの。

どんな風に置いてるのかしら・・・一度見に行ってみたいわ。




「―――出来たわ・・・どう?リリアさん」


出来あがった物をぴらっと広げてリリアさんに見てもらう。

縫い目は不揃いで下手だけれど、初めてにしては結構上手に出来あがったと思うわ。



「えぇ、とても素敵ですわ。エミリー様、よく頑張りましたわね、きっと、とても満足して頂けますわよ?」

「そうだといいけれど―――」

「勿論ですわ。素敵な夜になることは間違いございません。この仕立屋の私が、保証致します」

「・・・ありがとう。リリアさん」



目を細めてにっこりと微笑むリリアさんと一緒に笑う。


―――アラン様は、なんて言ってくれるかしら――――――
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