雪降る月夜に
籠の中を見せると、シリウスさんは自分の手の中の包みをじーっと見つめた後ポケットに仕舞って、にっこりと笑った。


「はい、勿論、協力致します」

「ありがとう」



次は、メイのところへ――・・・



「メイ?」


扉をノックして呼び掛けると、急いで出てきたメイが空色の瞳を見開いた。


「エミリー様、こんな時刻にこんなところに来られるなんて、何かあったのですか。それに、なんて可愛いお姿を―――」

「今日わたしはサンタクロースなの。メイ、いつもありがとう。これ、わたしが作ったの。メリークリスマス!」



微笑みながら包みを差し出すと、メイはシリウスさんとは違う反応をしてくれた。


「今夜はサンタクロース、なのですか?・・・何にしても、エミリー様可愛いです!可愛すぎます!そんなワケの分からないところが、私は大好きです!」

「――きゃっ」


笑いながら飛び付くように抱きついてきたのを必死に受け止めると、籠を落としそうになった。

すかさず背後からのびた手が籠を腕から抜き取ってくれたので、細い身体を思いきりぎゅうっと抱き締め返す。


「わたしも大好きよ、メイ。これからもよろしくね」

「エミリー様!」




包みを大事そうに持ってくれるメイと別れ


今度はナミのところへ―――



「ナミ。いつもありがとう。これは、わたしの感謝の気持ちよ。メリークリスマス!」

「エミリー様―――ありがとうございます。こんな綺麗なの、勿体なくて食べれません」



差し出した包みをしばらく眺めて動かないでいたナミは、両手で受け取ったあとに涙を浮かべた。


「泣かないで。頼りない主人だけれど、これからもよろしくね」

「はい―――誠心誠意、お尽くし致します!」



涙を拭きながら笑うナミと別れ


次は、料理長さん―――



「料理長さん、いつも美味しいお食事をありがとう。これはわたしが作ったの。メリークリスマス!」

「エミリー様、これは――――」


丸い頬をぷるぷると震わせて絶句する料理長さんのふくよかな手に、包みをのせた。

いつも親身になって相談にのってくれる優しいお方。

わたしの親戚の伯父様みたいな料理長さん。


「これからもよろしくおねがいします」

「こちらこそ―――」



柔らかそうな胸を叩く料理長さんと別れ、給仕さんと塔の警備兵さんに、使用人、行き合う皆に包みを届けて回る。

けれど、あの方の姿がどこもない。


「ウォルターさんは、どこにいるのかしら」

「この時刻、団長は政務塔におられます」



政務塔、行ってもいいかしら。


“君のしたいように――”


アラン様はそう言ってくれたっけ―――
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