真夜中のプロミス




「でも、静様は…」


「…腹の子のこと、か?」




義経が呟いた言葉に、郷御前がぴくりと肩を揺らす。


同時に二人から隠れるようにしていた静御前の瞳が揺れて開かれたことに気付くものはいない。




「知って、おられたんですか…?」


「何となくだがな」




静の最近の態度からそんな気はしていた、と。

そう呟く義経に、郷御前は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。


お腹の子の存在に気付いてなお、彼は静御前と別れる選択をした。


その事実が郷御前の心を酷く抉る。


義経も自身の下した決断が温かく優しい彼女を傷付けるとわかっていた。




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