真夜中のプロミス
そんな矢先のことだった。
義経たちの動向に感付いた頼朝によって、まるで警告のように彼女の父が粛清されたのは。
彼女は帰る場所を失ってしまった。
それでも彼女は決して、涙を流しはしなかった。
ただ、義経の手を握り真っ直ぐに前を見つめていた郷御前。
義経の脳裏からその横顔が消えることはない。
そしてあの時ほど己の妻を誇りに思ったことはない。
「あぁ、わかってるよ。だから返してやれなかった。それに…」
「それに…?」
あの時の彼女の姿を思い出しながら、義経は一度目を伏せる。
そしてそっと郷御前の手を包むと、穏やかな暖かい瞳で彼女の姿を捉えた。