真夜中のプロミス
その瞬間、郷御前の瞳にじわりと浮かぶ涙。
ふるりと睫毛が揺れ、一筋の雫がこぼれ落ちる。
それを拭うことなく彼女はゆっくりと目を伏せた。
「…そう、仰っていただけるなら…っ郷は何処までも、お供致します…っ!」
忠誠を誓うような言葉とポツリと落ちる涙の美しいこと。
何も知らぬ人々は彼女を温室育ちの女と侮っているだろう。
争いを避ける何も出来ぬ女だと、蔑むものもいるだろう。
けれど義経は知っている。
郷御前という女が如何に聡明であり、そして暖かい心を持った女なのかを。
その身をもって実感している。