蜜恋ア・ラ・モード

「有沢さん。俺は都子のことが好きです」

「ええ、知ってます。君の態度を見ていたら、誰だってわかる。都子さんはどうかわからないけれどね」


そう言って私に向けられた薫さんの目は、穏やかに弧を描く。

私はその笑みに答えず、目をそらした。

こんな時でも、薫さんは意地悪だ。

私のことなんて何でもお見通しのくせに……。

もちろん、洸太の気持ちは知っている。告白をされたわけじゃないけれど。

幼なじみの私から見ても、洸太はカッコイイと思う。それは高校生くらいになってからのバレンタインデーのチョコの数を見れば、誰もが納得するだろう。

なのに今まで、特定の彼女がいたことがない。

それが何を意味するのか───

『洸太はお前のことが好きなんだ』

洸太の友人たちから、よく聞かされた言葉。

そんなこと言われなくたってわかってる。何年洸太と一緒にいると思ってるのよ!!

でも、だからって、私はその気持ちに応えることはできなくて。

ずっと洸太の気持ちに気づいてないふりを続けてきた。

でも今はじめて洸太の口から出た「好き」の言葉を聞いて、少なからず私の心を揺さぶり苦しくさせた。


「都子が誰を思っていても構わない。俺は子供の頃から、ずっと都子だけを見てきた。好きだという気持ちは今でも少しも変わってない。都子を幸せにしたいと思っている」


洸太の本当の気持ちは私の胸を痛いほど突いてきて、肩で大きく息をつく。

涙を堪え立っているのがやっとの私の身体。それを薫さんの腕が支えてくれる。でも顔を見ることができなくて、荒くなる息を隠すように俯いた。
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