蜜恋ア・ラ・モード

「洸太くん、君の気持ちはわかった。でも一番大切なのは、彼女の気持ちじゃないか?」


私の身体を支える薫さんの腕に、力が込められる。

それは私に、しっかりしろと伝えているようで……。

そうだよね。ここで私が黙って俯いていても、何も変わらない。

私も洸太も前に進むためには、今のままじゃいけない。ちゃんと気持ちを伝えて、現実に向かい合わないと。

いつまでも、仲良しこよしの幼なじみのままではいけないんだ。

そうわかっていても顔を上げ洸太の顔を見れば、きっと涙を堪えることはできなりそうで。

洸太のことだ。そんな私を見れば、「都子の泣き顔、ブッサイクだなぁ」なんて笑って見せるに決まってる。

それが洸太の優しさで、精一杯の強がり。

それがわかっている私はなかなか顔が上げることができなくて、手に拳をギュッと握る。


「なぁ都子。顔を上げてくれないか?」


わかってるよ。私だって、できることならそうしたい。でもできないんだから、困ってるのに。

洸太なら、そんなこと気づきなさいよ!!

なんて心の中で勝手なことを言ったって、洸太に伝わるわけもなく。

しょうがないなぁ……。

諦らめて上げた顔は洸太の顔を見るとあっという間に涙腺が緩み、案の定の泣き顔。


「ほんと、都子の泣き顔は昔からブッサイクだよな」

「う、うるさい……洸太の、バカ……」


やっぱりね……。

でもそんな言葉を私に向ける洸太の顔も悲しそうに歪んでいて、私はもう涙を堪えることができなくなってしまった。
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