蜜恋ア・ラ・モード
薫さんの腕からすり抜けると、洸太に肘鉄を食らわす。
「イッてぇー!! ホントににそういうところ、昔っから変わってないよな。偉そうでさぁ」
「え、偉そうって……。洸太に言われたくない!!」
「ははっ、悪い悪い。でもさ、お前に泣かれると調子が狂うんだよ。……って、泣かせたのは俺か」
こんな時でも笑いでこの場を収めようとする洸太に、呆れてしまう。
でも洸太らしくて、泣きながらもクスッと笑みが溢れてしまった。
「そうそう、都子には泣き顔は似合わない。いつでも笑ってろ。そうすればいつでもお前には、幸せが舞い込んでくる。なぁ都子。お前、今幸せか?」
「え?」
唐突な質問に、涙が止まる。
「俺、さっき言ったよな? お前を幸せにしたいって」
好きだという気持ちは今でも少しも変わってない。都子を幸せにしたいと思っている───
確かに聞いた。洸太からの告白。
でもそれと今の質問に、何の関係があるというの?
洸太の質問の意味はわからない。けれど洸太の目を見つめたまま、こくんと頷いてみせた。
「で、どうなんだよ? 幸せなのか?」
洸太の目が、ちゃんと答えろよと語っている。
『幸せなのか?』 と聞かれたら、答えはひとつしかない。
薫さんの方を振り返ると、そこには私と洸太の話をじっと佇み笑顔を向けている薫さんがいた。
その優しい瞳に、背中を押されたような気がした。
薫さんに小さく頷くと、洸太に向き直った。