蜜恋ア・ラ・モード
でも薫さんも真剣に映画を観ていたみたいで、私が「なんでもない」と答えると大して気にせずテレビに視線を戻した。
隣に薫さんがいるのに、腕が触れ合うほど近くにいるというのに。
私は何を考えているんだろう。
今でも薫さんのことは好き。その気持ちは少しだって変わっていないのに、どうしてこんなに洸太のことが気になってしまうのか。
最初の頃は、ただ顔を合わせていないから寂しいだけと思っていたんだけど……。
三ヶ月近く経ってきて、なんだかそれだけじゃないと思い始めていた。
でもそれがどういうことなのか、自分でもよくわからない。
ゆっくり顔を横に向ければ、愛おしい人の穏やかな横顔。
そう、愛おしい───
薫さんのことを愛している自分がいるのに、何でこんなにも不安定な心気持ちのままなのか。
そんなことを考えながら薫さんのことを見つめていると、私の視線に気づいたのか薫さんが振り向いた。
「っ……」
「何をそんなに驚いてるの? なんか今日の都子さん、ちょっとおかしくない?」
「ご、ごめん。なんだろう、幸せボケ? ちょっと薫さんに見惚れちゃっただけ」
「なにそれ? でもまぁ、嬉しいけどね」
ふんわり肩を抱かれ、身体がギュッと密着する。
いつもなら幸せを感じるひとときなのに……。
自分がついた嘘に罪悪感さえ感じてしまい、どうにも居心地が悪い。
それでもこの優しい腕から離れたくないと思ってしまう私は、一体どうしたいと言うのだろう。
目を閉じても、その答えが出ることはなくて。
今はただ、薫さんに身を任せているしかなかった。