蜜恋ア・ラ・モード
高校生の頃は、洸太によく弁当を作ってあげたっけ。
『都子の弁当は格別だかんな』なんて言葉に騙されて毎日作ってあげてたんだけど、ちょっと嬉しかったりしたんだよね。
赤いタコさんウインナーが好きで、『高校生にもなってまだ入れるの?』って聞いたら、『弁当に年は関係ねー』とか言っちゃって、嬉しそうな顔しちゃって。
洸太、今でもタコさんウインナー好きなのかなぁ。
今度弁当作ってあげたら、また笑顔で喜んでくれるかな?
……今度? 今度っていつ? そんな日が来るの?
もうここ三ヶ月近く来ていない洸太が、またこの家に来ることがあるんだろうか。
きっと洸太は、ここに来ることを避けているに違いない。
それは洸太なりの遠慮なのか、それとも……。
最近はいつもそう。考えてもどうにもならないことを考えては、答えが出ずに落ち込んでしまう。
しかも今は料理教室の真っ最中だというのに。
自分の情けない行為にため息をつくと、肩にぽんと手が置かれた。
「都子さん、またひとりで何か考え事?」
「え? あぁ薫さん。お弁当のことをちょっと」
「弁当かぁ。今度都子さんが作るお弁当持って、どこかにドライブにでも行こうか?」
「……うん、それいいかも」
「じゃあ決定。ところで、もうすぐパスタが茹で上がるんだけど?」
「あぁ、ごめんなさい!! じゃあツナと大根おろしのソースを作っちゃいましょう」
いけない、いけない。今は洸太のことより仕事に集中しなくちゃでしょ、都子!!
自分にそう言い聞かせると気持ちを入れ替え、講習を再開させた。