蜜恋ア・ラ・モード
「洸太さんも都子先生と同じ28歳ですもんね。結婚適齢期ってやつですよ。ねっ都子先生?」
「えっ? あ……うん……」
柳川さんから急に話を振られてしまい、答えに困ってしまう。
ヤバい、泣いてしまいそう。普段通りの顔をする自信がない。
でもここで今私が泣いてしまえば、ここにいる全員に私の気持ちがバレてしまう。それだけはどうしても避けないと。
グッと手を握り少しだけ速くなっていた呼吸を整えると、俯きがちになっていた顔を上げる。
っとその瞬間、今一番顔を合わせたくない人と視線がぶつかってしまった。
有沢さんの目が一瞬寂しそうに揺れる。でもすぐにまっすぐ私の目を見つめなおすと、いつもの柔らかい眼差しを向けてから彼女たちに話しかけた。
「洸太くんと一緒にいた女性が、まだ彼女と決まったわけじゃないですし。憶測で話をするのは、この辺で止めましょう」
「そうかなぁ~。私は絶対に彼女さんだと思うんだけどなぁ」
薫さんの言葉に柳川さんは納得がいかないみたいで、高浜さんと梅本さんに宥められている。
でも私はそんなことより、薫さんの言葉に驚いていた。
洸太くんと一緒にいた女性が彼女と決まったわけじゃない───
それはまるで『だから落ち着きなさい』と、薫さんが私に掛けてくれた言葉のようにしか思えなくて。
きっと薫さんは、私の心の揺らぎをもうとっくに感じているんだろう。
だからあんなことを言ったに違いない。