蜜恋ア・ラ・モード
そしてそのままキッチン台に上にある弁当をのぞき込むと、背中をポンポンと撫で始めた。
「美味しそうな弁当だね。特にタコのウインナー、いいよ」
心臓が大き聞く脈を打つ。
本当に懐かしくて言っているのか、それともひとりごとを聞いていて私の反応を試してる?
薫さんはそんなことをするような人じゃないとわかっていても、つい疑ってしまう自分に嫌気が差す。
気持ちをはっきりさせない自分が悪いのに、薫さんを疑うなんて。
「薫さん、おはよう。なんか子供っぽいお弁当になっちゃって……」
「子供の頃を思い出して、懐かしい気持ちになった。昼が待ち遠しいね」
「うん。ところで薫さん、そろそろ離して欲しいんだけど」
薫さんの抱きしめる腕の力は、段々と増している。
それはまるで絶対に離さないとでも言うように弱まることはなくて、少しだけ苦しくなってきた。
「なぜだろう。今は離したくない気分なんだよね」
「で、でも、ちょっと苦しい」
「うん。でも、もう少しだけこのままにさせて……」
そんなこと言われたら、嫌だなんて言えないよ。
薫さんの切なそうな声に私も腕を伸ばすと、彼の身体をしっかりと抱きしめた。