蜜恋ア・ラ・モード
高速を飛ばして二時間弱。
到着したのは、目の前に綺麗な海が広がる公園。
季節が夏ならば、海水浴を楽しむ客でいっぱいの砂浜も、今日はところどころにカップルや家族連れの姿が見えるだけでのんびり過ごせそうだ。
「気持ちがいいー」
車から降りて身体を伸ばすと大きく深呼吸する。
海風は潮の匂いを運んできて、私の鼻をかすめていった。
「海に来たのなんて、何年ぶりかなぁ?」
「夏に泳ぎにとか行かなかったの?」
「学生の頃は何度か泳ぎに行ったけど、働くようになってからは料理教室の資金を貯めることに必死で、全然遊んでなくて」
「そうなんだ。てっきり、洸太君と来てるかと思ってたよ」
「え? あぁ……洸太とは、学生の頃に友達も一緒に行っただけで……」
薫さんの口から洸太の名前が出てくるとは思ってなくて、思わず答えがしどろもどろしてしまう。
何でいきなり洸太が出てくるの?
そう思っても聞くことはできなくて、薫さんから視線を逸らすと話題を変えた。
「ねぇ薫さん。あそこに見える灯台まで行かない?」
「そうだね。あの灯台の上から見る景色も良さそうだ」
すっと薫さんが手を差し出す。その手に自分の手を重ねると、薫さんがその手を握り私をグッと引き寄せた。