蜜恋ア・ラ・モード
もしかして……。
なんとなく聞かれることがわかると、灯台から目線を外す。そして薫さんの方を向くと、彼に話し掛けた。
「聞きたいことって、何でしょう?」
最近は使わなくなった敬語を使ってしまう。でも薫さんはそのことについて、以前みたいに意地悪することもなくて。
見上げていた視線をゆっくり下ろすと、私を真剣な眼差しで見つめた。そして繋いでいた手を離すと、大きく息を吐いてから口を開く。
「都子さん、胸に手を当ててよく考えてみて。今、君の心の中にいるのは誰なのか?」
「え?」
「今、君が一番想っている人は誰なのか? 正直に答えてみて」
やっぱり薫さんは気づいていたんだ、私が洸太のことを想い始めていたことを。それを知ってて私のそばに居てくれて、優しくしてくれていたんだ。
今だってそう。責め立てることもなく、いつもと変わらない瞳で私を見つめてくれている。
私の気持ちがわかっていて、どうしてそんな穏やかな目をしていられるの?
そんな目をされてしまったら、私はまた薫さんに甘えてしまうのに。
「いいんだよ、本心を答えてくれて。まぁ正直なことを言えば、都子さんの脳裏に浮かぶのは僕であってほしいけどね」
そう言って見せる顔は笑っているのになぜだか悲しみを感じ取ってしまった私は、瞳に涙が溜まってきてしまった。
もうダメ。堪えきれない──…
そう思ったのと同時に溜まっていた涙が瞳からこぼれると、何かがはじけたかのように想いが口からあふれだした。