蜜恋ア・ラ・モード

「あ、勘違いしないで。僕も本当に、都子さんのことが好きだったよ。いや、今だって好きだし愛してる。その気持ちはずっと変わっていない。だからこそ、どうしても君を手に入れたかった。洸太くんじゃなく、僕が君を幸せにしてあげたかった」

「薫さん……」

「恋に恋してしまった君の弱みに付け込んで、洸太くんが入る隙がないように仕向けたのに。でもそれが逆に、都子さんの洸太くんへの想いをふくらませてしまったみたいだ」

「じゃあ洸太が私の家に来なくなったのは」

「僕が来ないでくれと、洸太くんに頼んだんだ。ほんと情けない。大人げないことをしたと思っているよ。都子さん、申し訳なかった」


そう言って頭を下げる薫さんを、私は責めることなんてできない。

彼にそんなことをさせてしまったのは私のせい。私がもっと早くに洸太への気持ちに気づいていれば、薫さんが苦しむことはなかったのに。


「薫さん、頭を上げて。薫さんが謝ることなんて、ひとつもないんだから」


頭を下げたままの薫さんの腕に手を当てると、その手を取られ抱きしめられてしまう。

突然のことで驚きながらも薫さんの身体の震えを感じると、私もゆっくりと彼の身体を抱きしめた。

抱きしめられていて顔は見えない。この身体の震えは、薫さんが泣いているからだろうか。

どう言葉を掛けていいのかわからない私は、ただ彼の背中を擦ることしかできないでいた。

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