蜜恋ア・ラ・モード
12時を回ると、高鳴っていた胸も頂点を迎える。気持ちが高ぶりすぎて、どうにも落ち着かない。
まるで檻の中の猿のように、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。ジッとしていられなくて……。
「喉乾いた」
緊張から、喉はカラカラ。10月に入って過ごしやすい季節になってきてるのに、何故か汗ばんでたりもして。
きっと生徒さんは私以上に緊張して来るのだから、私はどんと余裕を持って迎え入れようと思っていたのに。とんだ大誤算だ。
冷蔵庫からよく冷えた炭酸水を取り出すと、それを一口含んでゆっくり喉に流す。
シュワシュワっとしたのどごしが爽快で、緊張していた身体からスッと軽くなる。
美容や健康に良いと聞き、最近飲み始めた炭酸水。実は料理にも活用できて、肉や根菜類などを煮こむ時に使うと早く柔らかくなると言われている。
教室でのメニューに取り入れてみるのもいいかもしれない。
なんて考えながらもう一口飲もうとペットボトルの口を顔に近づけると、誰かが訪れたことを知らせるチャイムが鳴った。
その大きな音に少し気の緩んでいた身体が大きく跳ね、思わずペットボトルを落っことしそうになってしまった。
危ない、危ない。せっかく昨日、綺麗に掃除したのに。
慌ててキャップを閉め冷蔵庫にしまうと、ささっと身なりを整えて玄関へと向かう。
リフォームの時に、玄関は明るくと依頼しておいた。そうして出来上がった玄関はガラスブロックで構成され、明るく心地いい空間を作り出してくれている。
壁でありながら光も透すガラスブロック。そこから、薄っすらと人の影が動くのが見えた。
都子、落ち着いて───
目を瞑り大きく息を吐くと、ゆっくりとドアを開けた。