蜜恋ア・ラ・モード

アイランド型の調理台の普段は蓋をしてある部分を開けると、左右に分かれて二人ずつが調理できるようになっている。

だから最大でも、四人までの少人数制になっているというわけ。

シンクは大きい物がひとつ。蛇口はふたつ付いているけれど、順番に使ってもらうことになる。

各自の前にはステンレスのバットの中に、筑前煮の材料が二人分入っていた。これは作った後、今晩の夕食の一品として自宅に持ち帰ってもらうため。

ここでの試食は、まとめて作る炊き込みご飯と味噌汁と一緒に、私が作ったものを食べてもらうつもりだ。


「では話はこれくらいにして、はじめましょうか」


私が軽く袖を捲ると、有沢さんも真似てワイシャツの袖を捲り始めた。

その姿が一生懸命で可愛くて。年上の人に可愛いなんて失礼かなと思いながらも、彼の姿を目で追ってしまっていた。

……って、何してんだろう。

彼女に手料理を振る舞ってあげたくてここに来てるのだから、一生懸命にもなってしまうと言うものだ。

有沢の彼女かぁ……。一体どんな人なんだろう。

そんなことを考えながらも、手は意外としっかり動いていて。バットの中の野菜をトントンとテンポよく切っていた。


「これが乱切りといいます。形は違っても大きさをそろえることがポイントね」


レンコン、ゴボウ、ニンジン、ゆでタケノコを切り終えると包丁を置く。


「では皆さんも切ってみてください。包丁の使い方はわかりますか?」


一人ひとりの包丁の使い方、野菜の切り方を見て回る。女性三人は学校で家庭科も習っていただろうし、さほど心配することはなかったのだけど。

高浜さんに「もうちょっと力を抜いて。でも包丁はしっかりと握ってね」と指導しながら、チラッと隣りにいる有沢さんの手元を見て驚いた。





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