蜜恋ア・ラ・モード
有沢さんが触れている肩が熱い。ただ触れているのとは違う、何かを感じてしまうのは何故?
手が触れている肩をそっと見れば、その手に力が込められた。
「私は有沢薫と言います。今日から都子先生にお世話になりますが、何か問題でも?」
その言葉は誰が見ても洸太に向けられたもので。
ちょっと喧嘩を売るような挑戦的な態度に、洸太の眼の色が変わった。
「いえ。何も問題はありませんが、男性の方が女性ばかりの料理教室に参加とは……。どういうつもりですか?」
「洸太っ!!」
「いえ、都子先生、構いませんよ」
有沢さんはフッと微笑み私の身体を少し後ろに下げると、洸太の前に立つ。
なんでこうなるの?
ほら見てよ。残された女性三人が、包丁を持ったままポカンと立ち尽くしてるじゃない。
今日は教室一日目なのに、スタートしたばかりなのに……。
もう一度向かい合っているふたりの方に目線を戻せば、なぜだか一触即発な雰囲気になってるし。
もう、どうしたらいいのよ!!
頭を抱えひとり悩んでいると、私の横に誰かがスッと立った。顔を上げ見れば、高浜さんが真剣な顔つきでそこにいて。
「都子先生。私に任せて下さい」
なんて言うもんだから。思わず「お願いします」なんて言ってしまったんだけど……。
どうやら、洸太の怒りと有沢さんの余裕の態度の前になすすべもなく。
シュンとして戻ってきた高浜さんの肩を、ポンポンと優しく撫でた。
「高浜さん、ありがとう。やっぱりここは、私がビシッと言わないとね。もう少しだけ待っててもらえる?」
高浜さんたちが頷いてくれたのを確認すると、ふたりの元に向かった。