蜜恋ア・ラ・モード

しかし何か良い案があるわけでもない。

握りこぶしを作っている手は震えているし、実のところ今の状態を解決する手立てはなしに等しい。

でも足だけはちゃんとふたりのもとに向かっていて。

ちょうどふたりの真ん中あたりで止まった。


「あ、あのぉ……」


勇気を振り絞って、恐る恐る口を開けば。


「なんだよっ!!」

「なんでしょうか?」


口調さえ違えど、ふたりとも邪魔をするなと言わんばかりに声を放ち。

私の方を見ることもなく、その目は睨み合ったままだ。

まあね、洸太が怒っているのはなんとなくわかるのよ。なんとなく……。

でもどうして有沢さんが、洸太に対抗しちゃってるわけ?

まだ少しの時間しか一緒にいないけれど、もっと穏やかな人で、こんな熱くなるような人だなんて思っても見なかったのに。

人って見かけによらないんだなぁ……。

っなんて、のんびりしてる場合じゃなかった!!

いくら幼なじみの洸太でも、生徒の有沢さんでも、勝手な行動は許されるはずがない。

だったここは私の家で、今は料理教室の真っ最中なんだから。

意を決して鼻からスーッと空気を吸い込むと、顔を真剣なものに変えてふたりの前に一歩踏み出した。


「ふたりとも、いい加減にして下さい。ここがどこで、今が何の時間か分かってるんでしょうか?」


私の普段より幾分低い声に気づいた洸太と有沢さんが、同時に振り向いた。

私の顔を見た有沢さんの目から、熱いものが消えていく。すると、有沢さんの右手がゆっくりと近づいてきて。

もう少しで私の頬に触れそうな位置でその手が止まった。


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