蜜恋ア・ラ・モード

「おいっ村野ー!! 都子に何してんだよっ!!」


遠くから見たら、私が村野くんに何かされてるようにでも見えたんだろうか。身振り手振りを交えて、何度も私に「村野から離れろ!!」って叫んでるんだけど。

今私が立っている大学の中庭には学園祭準備で結構な人がいて、みんなの注目が私に一点集中しちゃってて。

隣にいたはずの村野くんは、少し離れた場所で他人のふりをしながら肩を震わせ笑っている。


「村野くん、助けてよ」


洸太の行動に呆れながらも救いを求めると、村野くんは肩で大きく息を吐いた。

そしてもう一度私に近づくと、荷物を持っていない方の腕をサッと私の肩に回す。


「洸太ー!! 都子は俺のもんだ!!」

「村野ーーーっ!! そこで待ってろよっ!!」


これぞ正しく“火に油を注ぐ”

勢いの激しいものに、いっそう勢いを加えてどうするの。村野くん?

ジロッと恨めしい目で村野くんを見れば、何食わぬ顔をして「これぐらいしないと、アイツは今のまんま幼なじみで終わっちまうだろ?」って。

こんなことしたって、私と洸太はずっと幼なじみだよ。それ以上でもそれ以下でもない。

きっと変わらない。


「何なら、本当に俺のもんになる?」


村野くんはそう言いながら肩を抱く腕の力を強め、洸太の姿が消えた窓を見ていた私に顔を近づけた。


「それ以上近づいたら、藍子に言いつけるから」


藍子とは私の親友で、村野くんの可愛い彼女だ。だから最初から冗談だってわかってたんだけど。


「小浦、悪い!! 藍子には内緒にしといてくれよ」


手を合わせながら頭を下げて一生懸命謝る村野くんは、藍子のことをちゃんと愛してくれてるんだと嬉しくなってきて。

「頭を上げて」と彼の肩に手を乗せた瞬間その手を誰かに強く引かれ、ストップモーションのように後ろに倒れこむ私の目に映ったのは、洸太に拳で殴られる村野くんの姿だった。


* * *






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