蜜恋ア・ラ・モード
でもやっぱり有沢さんはそんなことお構いなしに、また私に近づいた。
「すみません、驚かせて。でも都子先生が、あまりにも嬉しそうな顔をしていたのでつい。何か美味しいものでも食べること、考えてましたか?」
「えっ?」
何でわかっちゃったの? もしかして有沢さんって、エスパーだったりする?
人の心の中を盗み見るなんて、いくら有沢さんでも許される行為じゃないと思うんですけど。
更に赤くなったであろう顔を片手で軽く隠し、指の隙間から有沢さんの顔を見る。何でそんな涼しそうな顔をしているわけ? それも私の反応を楽しんでいるかのように、クスクス笑ってるなんて。
有沢さんって、案外人が悪い?
「有沢さん。もしかして私の事からかってます?」
「さぁ、どうでしょう?」
右の口角を少し上げてニヤリと笑うなんて……。からかわれてるよね、私。
もう!! と言わんばかりに後ろに振り返ると、今度は私と有沢さんを交互に見ながらニヤニヤと笑う高浜さんと目が合う。
「都子先生。からかわれてますね」
「やっぱり……」
肩を落とし項垂れると、高浜さんに優しく肩を叩かれた。
「先生。がんばって下さいね」
「え? 何を?」
「それは……。自分で考えて下さい」
なんて、ニッコリ笑って言われても。何をどう考えればいいわけ? ヒントくらい無いの?
ひとり考えこんでいる私をよそに、有沢さんと高浜さんは何かをこそこそと話しているし。
「じゃあ都子先生。また次回を楽しみにしてますね」
有沢さんがそう言うと、まだ何も解決してない私を残してみんな帰っていった。
結局最後は何だったのかわからないままだからか、心の中はまだモヤモヤしたままだけど。
有沢さんのことだけは、ハッキリと残っていた。