蜜恋ア・ラ・モード
どうやら私は、気持ちが顔にすぐ出てしまうみたいだ。今も頬が火照って仕方がない。
たまらなくなって有沢さんから視線を逸らし俯くと、洸太がはぁと大きくため息を付いた。
「まぁいいや。ふたりで勝手にやってろよ。これ今日の注文分」
そう言ってドンッといつものケースを置くと、そのまま何も言わずに玄関から出て行った。
一体どうしちゃったっていうの? いつもの洸太ならこんな場合私に詰め寄ってくるか、相手が誰構わず突っかかるのに。
いや別に、そうして欲しかったわけじゃないんだけれど。拍子抜けしちゃうというか何というか。
あまりにいつもの洸太らしくなくて、戸惑う自分がいた。
「すみません。僕が洸太くんを怒らせてしまったみたいだ」
すみませんと謝っているのに、あまり反省している感じはなくて。肩に回されている腕は、未だに私を抱いていた。
「どうして、洸太にあんな事言ったんですか?」
「それは……」
「有沢さんには彼女さんがいるんですよね? なのにあんな事言うなんて、冗談だとしても酷いと思います。私のこと、からかってるんですか?」
有沢さんの顔を伺うように見れば、何故か有沢さんは悲しそうな笑みを浮かべた。
どうして有沢さんが悲しそうな顔をするの? 今悲しい気分なのは、私の方なのに……。
「私の気持ちも知らないで、どうしてそんな風に微笑むの?」
「私の気持ちって……」
「有沢さんには彼女がいるってわかってるのに、私は有沢さんのことを好きになってしまって。この気持ちはずっと隠したままにしておこうと思ったのに。有沢さん、酷い……」
とうとう言ってしまった。
この気持ちはもう抑えられなくなっていたし、ダメだとわかっていても告白しようと思っていたけれど。
こんな形で告白することになるなんて……。