蜜恋ア・ラ・モード
「どう話したら都子さんに気持ちが伝わるかわからないから、ここは単刀直入に言います。都さん、僕はあなたのことが好きです」
有沢さんの形の良い唇から発せられた言葉は思ってもいなかったもので、しばしその姿に見惚れてしまう。
僕はあなたのことが好きです───
その“好き”は、どんな意味の“好き”なのか。
私の気持ちを知った上でキスしてくるくらいだから、いい人だとか友達に対する“好き”ではないんだろうけれど。
有沢さんに彼女がいると知っている身としては、素直に嬉しいとは感じられなくて。
「あ、有沢さん。自分が言ってることの意味、ちゃんとわかってるんですか?」
「はい。もちろんわかってます」
あまりにも真面目な顔をしてサラッと言いのけてしまうんだから、呆れて物が言えない。私は有沢さんのことを買いかぶりすぎていたのだろうか。
もっと誠実な人だと思っていたのに……。
「有沢さんがそんな人だとは思わなかったです。誰にでも好きって言えるんですね。最低……」
「最低、ですか。それはちょっとツラいな」
そう言って本当にツラそうな顔で苦笑してみせると、少し私との距離を縮める。
「な、なんですか!? この状況でそんなに近づかなくても……」
と言いかけた私の唇に有沢さんが人差し指を当てたりするもんだから、唇の自由を奪われてその先を言わせてもらえない。
「少し黙って」
少し威圧的な物言いとスッと細められた目に、身体がゾクッと震える。
有沢さん、こんな顔もするんだ。
いつもの柔らかいものとは真逆と言っていいほどの、大人の香りが漂う魅惑的な表情に目が離せない。