蜜恋ア・ラ・モード
高浜さんたちに笑顔を振りまいている姿に無理を感じ、心の中がモヤモヤしていたことを。
あの時の私が感じた違和感は、間違いじゃなかった?
彼の背中に回していた腕を緩め少し余裕のできた空間に顔を上げると、いつもの優しい笑顔が私を見つめていた。
「僕のことを信じてくれる気になった?」
私の顔を覗き込み至近距離で甘くささやかれると、さっきのキスを思い出して一瞬で顔が熱くなる。
「か、顔が近いんですけど……」
「僕の質問に答えてくれたら離します。でも、答えてくれなかったら……」
「答えなかったら?」
私の返しにクスッと笑うと、静かに顔を近づける有沢さん。
こ、これは!! またキスされるっ!?
有沢さんとキスしたい気持ちと拒まなきゃいけない気持ち。その両方がぶつかり合って、心の中は葛藤中。
少しだけ勝ったキスしたい気持ちが私の目を閉じさせそうとして、でも唇が触れる寸前で正気に戻った私は手のひらで自分の口を塞いだ。
「有沢さん、ズルいです」
「ははっ、確かにズルいですね。でも……」
可愛い顔をする都子さんがいけない───
なんて言いながら、頬にチュッとキスをひとつ。
「有沢さんっ!!」
有沢さんに怒って見せても、真っ赤になっているであろう顔ではその効果はゼロ。
諦めて肩を落とすと、ポンと頭の上に優しく手を乗せられて。その手がゆっくりと動き撫でられると、不思議と気持ちが落ち着いていく。
「君には全部聞いて欲しいんだ」
立ち上がった有沢さんが、スッと手を差し伸べる。
その手を掴み私も立ち上がると、そのまま手を引かれリビングへと移動した。