蜜恋ア・ラ・モード
季節は秋も深くなってきていて、玄関は少しだけ身体を冷やした。
温かいお茶を淹れると窓際のガラステーブルにそれを置き、有沢さんの隣に少し間隔を開けて遠慮がちに座る。
何となく恥ずかしくて、顔を上げることができない。
そんな私を見て有沢さんが「今更でしょ?」と肩をグッと引き寄せ、油断していた私の身体はそのまま有沢さんの胸に飛び込む形となってしまった。
「わあっ!!」
年甲斐もなく子供っぽい声を出してしまった自分に、慌てて口をつぐむ。
なんだ、この展開は!!
これはどう見ても、イチャイチャカップルじゃない?
背中に回っている有沢さんの手は、私の身体をギュッと抱きしめている。
久しぶりの男性との触れ合いに、さっきから私の心の許容範囲を超えていて。
こういう場合どうしたらいい?
じっとこのまま抱かれていればいいの?
この身体の熱さは一体何なのっ!?
恋愛経験不足の頭の中はそんなことばかり考えていて、ちょっとお疲れ気味。
「えっと、このままじゃ話ができないと思うんですけど?」
「う~ん、そう言われればそうですね。でもね、せっかく手に入れた都子さんを手放すことができなくて」
手に入れたって……。
有沢さんの中では、私はもう彼女? みたいだけれど、私の気持ちはまだそうはいかない。
僕には彼女はいない───
有沢さんは言っていたけれど、まだその本意を聞いていない。そこをハッキリしないと、私は自分から有沢さんの胸には飛び込んではいけないんだから。
「有沢さん。ちゃんと話をしましょう」
有沢さんの胸の中は心地いいけれど、このままではダメだと真面目な声で話しかけてみる。
すると私の気持ちを汲み取ったのか、有沢さんが腕の戒めを静かに解いた。