蜜恋ア・ラ・モード
「都子さんとふたりだけで、話をする機会が欲しかった。そして僕のすべてを話した上で、君に告白しようと思っていたのに……」
都子さんに先を越されてしまった─── と照れくさそうに言うもんだから、私まで恥ずかしくなって思わず「ごめんなさい」と謝ってしまう。
「君が謝る必要はないさ。そんな状況を作ってしまった、僕に落ち度があったんだから。でも内心はとても嬉しかった。年甲斐もなく、頭のなかでガッツポーズをしてしまったくらいだからね」
有沢さんがガッツポーズ!? その頭のなかのシーンを見てみたかった!!
なんて、バカなことを考えてクスッと笑みが漏れてしまう。
「うん。やっぱり都子さんは、笑っている方がいい。なんて、泣かしてしまった僕が言うのもなんだけど」
そう言いながら私に向かって手を伸ばすと、まだ乾ききっていない頬の涙をもう一度拭う。
彼の指先が触れたところからじんわりと熱が伝わっていって、私の身体を必要以上に熱くする。
こんな経験のない私は、その熱の逃し方を知らない。
熱さに負けて、おかしくなりそう……。
身体中にこもる熱に困惑しながらも、何故か有沢さんから目を逸らすことはできなくて。
そんな私を有沢さんはじっと見つめると、何かを決心したように口を開いた。
「僕には、将来を誓いあった女性がいた。一年半前までは……」
一旦そこで言葉を切ると、また悲しげな表情を見せる。
余程話すのが辛いことなんだろう。
それでも私に何かを伝えたくて話そうとする姿に、これまでに感じたことのない感情が胸の奥から湧き上がる。
彼のことを守ってあげたい?
これは女性特有の“母性”というものなのだろうか。
とにかく今は彼を安心させてあげたくて、ゆっくりと伸ばした手は彼の両手を包み込んでいた。