蜜恋ア・ラ・モード
伝え合う気持ち
瞬間、驚きのあまり目を見開いた有沢さんだったけれど、すぐにその目を細めると唇が深く重なった。
「これが都子さんの答え?」
唇を軽く合わせたまま、甘く掠れた声で彼がつぶやく。
柔らかく食むように唇を舐められて、それだけで身体から力が抜けていく。崩れそうになる身体を有沢さんの腕が強く抱きしめた。
「もう一度、好きだと言って?」
重なっていた唇が一瞬離れると、ぼんやりとした瞳の中に期待に満ちた目で私を見つめる有沢さんの顔が映る。
真佳さんに勝てる自信がない───
有沢さんに甘い言葉を紡いでもらっても、やっぱりその気持ちは変わらない。
でもそんなことどうでも良くなるくらい、私は有沢さんのことが好きみたいで……。有沢さんのことを欲している身体は、私の唇をゆっくりと動かした。
「……好き……」
私の呟きに満足そうな笑みを浮かべた有沢さんは、その言葉ごと唇を奪う。
さっきまでよりも深く重なりあう唇。
「うん……僕も好きです」
キスの合間、吐息混じりに囁く愛の言葉に思考が溶けていく。
私も好き。有沢さんのことが大好き。
啄むようなキスを繰り返し、わずかに開いた隙間から柔らかい舌が入り込む。どちらからともなく口内で熱を絡ませ、それは段々と激しくなっていった。
「ん……ふ……」
艶っぽい声が喉の奥から漏れると、有沢さんの私を抱く腕に力が込められた。それに応えるように、私も彼の背中に腕を回す。
ぼんやりと目を開けば、熱を帯びた彼の視線。
少しだけ照れくさくなってもう一度目を閉じようとした時に、壁にある時計が目に入った。
正確に時を刻む針をとろんとした目で追っていて、あることを思い出すと一瞬で現実に引き戻される。
「あっ!!」
突然大きな声を上げると、飛び跳ねるように有沢さんの身体から離れた。