蜜恋ア・ラ・モード
「せーんせい。有沢さんと、うまくいってるみたいですね」
高浜さんは身体近づけ楽しそうに言うと、肩をグイグイ押し当てる。
予感的中……。
はぁとため息をつくと、梅本さんたちがこちらを向いていないか確認してから高浜さんに顔を寄せた。
「うまくいってるも何も、また始まったばかりだから秘密にしておいてね」
「あぁ~。やっぱり私の思ってた通りになったなぁ。都子先生は、有沢さんとくっつくと思ってたんです」
「くっつくって……」
「大丈夫です。私、ふたりを応援しますから」
あはは……。ガッツポーズなんかしちゃって。
高浜さんには敵わない。全てお見通しってことなのね。
でも誰かに恋を応援してもらえるのは、ちょっと心強いかも。
料理教室を開くため。そのためだけに働いていた私は、恋なんて二の次で。恋愛の仕方を、すっかり忘れてしまっていた。
親友の藍子に話を聞いてもらうのもいいかもしれないけれど、彼女も母親と同じく洸太派で。会えばいつも『なんで洸太くんと一緒にならないの?』と言われる始末。
藍子に薫さんのことを相談するのは、まだ早いよね?
やっぱりここは、高浜さんにお願いするのが良さそうだ。
「頼りにしてるからね、高浜さん」
小声でそう伝えると、少しだけ頬を染めて彼女が嬉しそうに微笑んだ。
結婚していて子供もいると言っても、高浜さんもまだ二十代前半の女の子。こういう仕草は、初々しくて可愛らしい。
「あぁでも都子先生。私も恋愛経験豊富じゃないんで。旦那さんも、ちょっと特殊な人だし」
「特殊な人? そうなのね。でもちょっと興味あるかも。ぜひ今度、ゆっくり聞かせてね」
はい! と高浜さんの軽やかな返事を聞くと、その場を離れ自分の定位置へと戻る。