蜜恋ア・ラ・モード
「それにしても、よく食べるよね」
「そうか? まだ腹いっぱいじゃないぞ」
洸太が運転する車の助手席で呆れ顔の私。そんな私の顔を見て、洸太がブッと吹き出した。
「おもしれー顔。そんな顔してると、いつまでたっても嫁の貰い手がないぞ」
「放っといてよ。私はまだ結婚したくないだけなの。洸太と一緒にしないで」
「お、俺はだなぁ、その気になればいつだってできるからいいんだよ」
その自信はどこから出てくるのか。だったら早く彼女のひとりでも作って、私の前に連れてきてみなさいよ!!
と喉まで出かかって、その言葉を飲み込んだ。
今ここで喧嘩腰になるのは、いい選択とはいえない。私から頼んだわけじゃなくても、引越しの手伝いをしてもらってるんだから。
小さく肩をすぼめると、窓の外に視線を移す。
九月といえば暦の上では秋だというのに、日差しはまだ夏のまま。道行く人は暑そうに、流れる汗を拭っている。
夏の暑さが苦手な私は、早く秋になってくれるのを待っているのだけれど……。こればっかりは、私にはどうにもならない。
「早く夏が終わればいいのに……」
思っていたことが、思わず口をついて出てしまった。
「お前らしいなぁ」
洸太が意味のわからないことを口走る。
「私らしいって、どういうこと?」
「だって秋って言えば、旨いもんがてんこ盛りだろ。料理が好きな都子らしいなぁと思ってさ」
「あぁ……」
まさか洸太の口からそんな言葉が返ってくるとこれっぽっちも思っていなかった私は一瞬言葉を失い、洸太が私のことをよく見ててくれたことに嬉しさが込み上げる。
これが幼なじみというものなのか、それとも……。
不意に私の中に沸き起こった不思議な気持ちに、戸惑う自分がいた。