蜜恋ア・ラ・モード

そのまましばらく摘んだまま、離してもらえない唇。

薫さんの目は次第に熱を帯びていき、その眼力に逸らすことさえままならなくなっていく。

いったい私をどうするつもりなの、薫さん!!

されるがままの私を見て愉しんでいるように笑う薫さんが、ちょっと恨めしい。

腑に落ちなくてブスッとした顔を見せると、くすくすと笑いながら私の唇を摘んでいた指を離し、その手を頭の上に乗せた。


「都子さんの表情は、見てて本当に飽きない」


私の頭をポンポンと撫でる姿は、まるで父親のよう。


「薫さん、私をからかってますよね? 子供じゃないのに……」


と言ってしまってから、自分がまだ敬語を使っていることに気づいた。

しまった……。

恐る恐る薫さんの顔を見れば、してやったりとほくそ笑む。


「いやいやいや!! 今のはちょっとしたミスで、約束破ったことには……」


そう言うと席を立ち、慌ててその場から離れた。

家の中なんて大して広くないし、逃げたところで無駄なのはわかっているんだけど……。

薫さんのあの顔は、危険極まりない。

ソファーの一番奥に乗り込み身体を小さく屈めると、薫さんの声が聞こえないように耳を塞ぐ。


「都子さん、往生際が悪いと思うんだけど」


そう言いながら近づいてきた薫さんが、ソファーに片膝を乗せる。

その反動で沈み込んだ私の身体を、薫さんがギュッと抱きしめた。


「そんな可愛いことしたって無駄。さて、何をしてもらおうかな」


耳元で甘く囁く言葉に身体が痺れる。こんな時にズルい……。

でも薫さんはそんな私をよそに私の身体を抱き上げると、スタスタと歩き出した。


「か、薫さんどこに!?」

「都さんと一緒に、風呂に入ろうと思って」


ごく当たり前にそんなことを言うもんだから、何も言うことができなくて。

薫さんの腕の中で、彼の顔をただ見つめていた。





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