蜜恋ア・ラ・モード
第三章
優しさと強がり
『都子さん、おはよう』
夢の中でそう呼びかける声に目を開ければ、そこには優しく微笑む薫さんの見目麗しい顔があって。
なんだか安心すると、その顔にゆっくりと手を伸ばす。
薫さんに触れた指先が、彼の頬の感触を私に伝え始めて。
あぁ~、夢の中でも感触ってこんなにわかるものなんだ。
気持ちいい……って、うん? なんだか妙に温かく感じるんだけど。
これは夢? それとも現実?
現実!?
寝ぼけていた脳が徐々に覚醒し始めると、頬に触れていた手を引っ込めようとして呆気なくその手を取られてしまう。
「遠慮しなくていいのに。もっと触ってていいよ」
やっぱり……
この声は間違いなく薫さんのもので。耳から伝わるその声にこれは現実なんだと悟ると、恐る恐る目を開けた。
するとやっぱりさっきと同じ、薫さんの見目麗しい顔が私を見つめていて。
薫さんの手に包まれた私の手は、頬に戻されてしまっていた。
もっと触っていいよ……なんて言われても、目が覚めた今となっては触りたいけど触りにくい。
と言うか、今のこの状況。
よく考えて見れば、昨晩薫さんと愛しあった後そのまま寝てしまった私は、まだ何も身につけていないわけで。
いわゆる素っ裸。
片手を取られている起き上がることもできない私は、もう片方の手で掛け布団を引っ張りあげた。
「何隠してるの? 今更でしょ」
なんて言いながら私の身体を抱き寄せると、前髪を掛け分けおでこにチュッとキスを落とす。
なんですか、このシチュエーション!!
こんな甘い朝に慣れていない私はどう反応していいのかわからなくて、そのまま布団の中に潜り込んだ。