蜜恋ア・ラ・モード
でも正直なところ、嬉しい気持ちのほうが上回っていたりして。
抱きしめられている身体は薫さんに愛された痕ががまだあちこちに残っていて、それが私の身体をまた熱くしていった。
「都子さんの胸、ドキドキしてる」
「え?」
「身体も熱くなってきてるし。それって僕のせい?」
頭まですっぽり被っていた布団を捲り私の顔を出すと、薫さんの妖しく光る瞳とぶつかる。
それはいつも薫さんが見せるお得意の顔で、意地悪に微笑むと私の耳元に顔を寄せた。
「じゃあ、もっと熱くしてあげる」
“じゃあ” って、私は何も答えてないんだけど……。
でもその言葉の意味は、すぐに理解できてしまった。
だって薫さんの激しく深いキスは、私に息継ぎさえもさせてはくれなくて。
薫さんが早急に身体を愛撫し始めると、私はいとも簡単に薫さんの腕に落ちてしまった。
汗で濡れた身体をシャワーで流すと重い身体をなんとか奮い立たせ、朝食を作るためにキッチンに立つ。
昨晩私は、薫さんにちゃんと伝えた。
久しぶりだから、お手柔らかに───と。
なのに朝からなんて……。
包丁を握る手に、思わず力が入ってしまう。
「肩の力を抜かないと危ないよ」
シャワーを浴び終えた薫さんがいつの間にか後ろに立っていて、私の肩を軽く抱く。
「誰のせいだと思ってるの?」
「さあ?」
白々しくそう言うと、髪を一つにまとめて顕になっているうなじに唇を寄せた。
全く反省の色がないんじゃないですか、薫さん。私は怒ってるんですよ?
内心ではそう思っているものの、薫さんを目の前にするとつい許してしまう。
これも惚れた弱み……というやつなんだろう。
そして彼の喜ぶ顔が見たくて、せっせと朝食を作ってしまう私がいた。