蜜恋ア・ラ・モード
普段なら食欲がわかなくてコーヒーだけで済ませてしまう朝食も、薫さんと一緒だと思うとお腹が空いてくるから不思議。
いい香りが漂始めたエスプレッソマシンの横で、アメリカンクラブハウスサンドを作る。
朝から少しボリュームがありすぎ? なんて思ったりもしたけれど。
薫さんに喜んでもらいたい気持ちが高まってしまい、作る手を止めることはできなくて。
アメリカンクラブハウスサンドとポテトフライ、グリーンサラダをワンプレートにまとめると、テーブルへと運ぶ。
「薫さん、朝食でき……たよ」
また敬語を使いそうになってそれを寸前で堪える。
朝から薫さんの言うことを何でも聞かないといかないなんて……。考えただけで恐ろしい。
薫さんをチラッと見れば、ソファーで新聞を読んでいた薫さんが顔を上げ笑いながら立ち上がる。
「今、敬語使いそうになったでしょ? 間違えても良かったのに」
そう言いながら私の近くまで来ると、頭にポンと手を置いた。
ドキッと高鳴る心臓。
なんとなく恥ずかしくて顔を少ししてに向けると、上目使いに彼を見た。
「朝から意地悪言わないで。まだ慣れてないから、つい」
「そうだね、まだ始まったばかりだ。ゆっくり慣れていけばいいよ」
薫さんは私の髪をくしゃくしゃっと撫でると席につく。
「さすが料理教室の先生。すごく美味しそうだね」
「温かいうちに食べて」
コーヒーも用意すると、私も薫さんの前に腰を下ろす。
目の前には、大好きな薫さんの笑顔。
薫さんの「いただきます」の言葉に、身体全体から幸せが溢れ出す。
「いただきます」
私もそう手を合わせると、アメリカンクラブハウスサンドにかぶりついた。