Treasure~もう一度、恋~
「お仕事でね、すごく遠いところにいるんだ。」

「お仕事?」

「そう。遠いところだし、忙しくて帰ってこれないの。」





嘘じゃ、ない。

今の陽斗には、これが精一杯。





「じゃあ、お仕事が終わったら、帰ってくる?」

「…」

「おかあさん?」

「うん。…きっと、帰ってきてくれるよ。」





これは、嘘だ。

あたしと彼の人生が交わることは、もう無い。

もう二度と、会うことは、無い。




「わぁい!じゃあ僕、それまでいい子にしてるね!」

「…うん、そうだね」




嬉しそうな陽斗を見て、少しだけ泣きそうになる。




いつか

いつか、陽斗にも父親が必要になる。

それも、遠くない将来




あたしは

どうするの?






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