Treasure~もう一度、恋~
「…村上さん?」

「こんにちわ、有希さん。」

「いつからここに?ずぶぬれじゃないですか!」




アパートの前に佇む、瞬のマネージャーの村上さんの腕を引っ張り、

玄関の鍵を開けた。



「これ、使って下さい。今なにかあったかい飲み物入れますね」



タオルを差し出しても、村上さんは視線を落としたまま、受け取らない。




「…村上さん?瞬なら、まだバイトですけど…どうしたんですか?」

「今日は、有希さんにお話があって来ました。」

「わたし、ですか?」



村上さんは、視線をあげると、まっすぐにあたしを見つめた。

強い、意志を持った眼差しだった。




「単刀直入に申し上げます。瞬と、別れてほしい。」

「…え…」



突然のことに、あたしは言葉を失った。



「映画の主演が決まって、連続ドラマの話も来ている。
 瞬にとって、大事な時期なんだ。」

「…」

「瞬が、どれだけ君を大切にしているか、知っているつもりだ。
 あいつは、私が説得しても絶対に納得しないだろう。」

「…」


「だから…つらい選択をさせるのを承知で、お願いだ。」




変なの

村上さんの方が、泣きそうな顔をしてる。



「あいつの前から、消えて欲しい」





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