Treasure~もう一度、恋~
あたしは、なにも言わずに頷いた。

村上さんは、少しだけほっとした顔をして、でもすごく悲しそうな顔をしたまま、

背中を向けた。




「…本当に、すまない」




それだけ、言い残して

彼は、立ち去った。





わかっていたけど、見て見ぬ振りをしていた。

いつか、あたしの存在が瞬の足枷になる。

…村上さんは、お互いの傷が浅いうちに、それを止めてくれたんだ。

自分が、悪者になって




『…有希さん?』

「恨んでなんか、いません。」



そう

だって、あたしは知っている



「あの時、誰よりも瞬のことを考えていたのは、村上さんだから…
 感謝はしても、恨みなんか、しません。」

『…』

「村上さん?」



電話の向こうで、短い笑い声が聞こえた。



『そんな君だから、瞬はいつまでも忘れられなかったんだろうな』

「え…?」

『別れさせた張本人が言うのもなんだけど、君が瞬のもとに帰ってきてくれてよかった。
 …心から、そう思うよ。』

「村上さん…」



じん、と胸が熱くなる。



『ただね、有希さん』



村上さんの声が少しだけ硬くなる。



『芸能人と結婚するってことは、並大抵の覚悟じゃ続かない。
 つらいことは想像よりずっと多いだろう。
 …それでも、瞬と一緒にいることを選ぶかい?』

「はい」



決めたこと

もう、瞬の手を離さない










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