ベリーの魔法
メリッサに置いていかれたコレットは、キャンディの上に座ってぼんやりと部屋の中を眺めた。
置いてあるものはメリッサの魔女の家と変わりないが、こちらのほうが随分片付いている。
性格の違いがでるものだなと思いながら、コレットは作業中のルークの背中に目を移した。
ルークは彼の庭からありとあらゆるベリーを摘んできて、何やら思案している。
ベリーの魔法にかかったら、ベリーで解くのが常識なんだそうだ。
魔法関係の知識に疎いコレットにはよくわからないが、そういうものなのだろう。
そこでふと、先ほどルークが言っていたことを思い出した。
「あの、ルークさん」
「何でしょう?」
「さっきのメリッサとの会話、『あまり時間がない』ってどういうことですか?」
「ああ、それは」
ルークはベリーの選別作業を中断して、コレットを振り返った。
「失敗した魔法は呪いのようなもので、あなたはほぼ呪いにかかっている状態なんです」
コレットは自分の小さくなった体を見下ろした。確かに呪いといわれればそんな感じがしないでもない。
(もしかして、呪いだからあんまり時間がかかると解けなくなるとか?)
首を傾げるコレットに、ルークは続ける。
「聖夜に輝く星の光が穢れを払うのは、知っていますね?」
「ええ」
それくらいは魔法に疎いコレットでも知っている。毎年光輝く金色の粉が夜空から降り注ぎ、穢れや呪いを清めていくのだ。
「普通なら、強い呪いでも聖夜を迎えれば弱まります。けれどあなたの場合は呪いのようで呪いでなく、間抜けなメリッサの魔法です。不完全な魔法は、もしかするとあなたごと消えてしまうかもしれません」
「そんなまさか」
「過去に数人、消えてしまった人がいます」
ルークが恐ろしいことを平気で口にし、コレットは青ざめた。