5年目のクリスマス
「アマザンホテルまでお願いします」
タクシーに乗り込み、運転手さんに声をかけた。
座席に体を預け、ざわざわする気持ちを落ち着ける。
どうしてこんなことになったんだろうかと、今でもこの展開が理解できない。
それでもこうしてタクシーに揺られているのは、奇跡なんて起きわけないとわかっていても、クリスマスの魔法が幸せを運んできてくれるんじゃないかと、期待しているせいかもしれない。
奇跡なんて……無理だとわかっているのに。
期待している自分が情けなくて、切なくて、やっぱり帰ろうかと、視線を上げると。
ミラー越しに運転手さんと目が合った。
まだ30代くらいの若い男性の運転手さんは、優しい笑顔を私に向けてくれた。
「さすがにクリスマスですね。さきほどのお客様もアマザンホテルで待ち合わせだとおっしゃってました」