5年目のクリスマス
その言葉が何故か気になった。
「5年も片思いをしていた女性への告白らしいんですが、好きで好きでどうしようもないと熱くおっしゃりながらも手は震えてらっしゃいました。
今のあなたのように笑顔もうまく作れなくて困っていましたが、ブルーのネクタイがお似合いの素敵な男性でしたよ」
「笑顔……」
「はい。先ほどのお客様は、今頃は幸せになっているかもしれませんが、お客様も楽しいクリスマスになればいいですね。クリスマスには、笑顔が似合いますから」
そう言えば、朝からずっとため息ばかりで笑顔なんて作れなかった。
先輩には恋人がいるというのに、私とクリスマスに、それもアマザンホテルで会うだなんて、信じられない。
恋人と喧嘩でもして、やけになってるのかな。
それならそれで、私も諦められるかもしれないけれど。
膝に置いた手をぎゅっと握りしめ、震えを止める。
運転手さんがアマザンホテルまで送ったというお客様と同じように、私も震えている。
緊張で胸も痛い。