さよなら魔法使い
「あの子の作るパンはすごく独創的だったわ。荒々しいように見えて繊細で、あれはもう特別なものだったわね。」

魔法使いは魔法を使ってパンを作っていた。

魔法を使ってリースを壊していった。

魔法を使ってリースを治してくれた。

「長い間…見ていないんでしょう?ジベルのオーナメントを見に行く?」

トゥーリのその言葉にリースは視線を合わせるだけの反応を示す。

彼女の手の中にはムッシューノエルのオーナメント。

「コースケのも飾ることだし。」

全てに向き合うこともまた進むことなのだ。

リースは諦めを含めた笑みを浮かべて頷いた。

「そろそろ店も閉まる頃だしね。行こうかな。」





閉店時間が近付く店の中はそれなりの賑わいを見せていた。

今日はノエル、その為の早い店じまいはどこも同じだろう。

店の入り口近くに飾られサパン・ド・ノエル、リースはオーナメントを飾るためにゆっくりと近付いた。

< 10 / 19 >

この作品をシェア

pagetop