さよなら魔法使い
「親元離れて何年経ったと思ってるのよ。マダムトゥーリ。」

「そう、あなたは口だけはいつも大人顔負けだったわ。」

「それだけ言葉が豊富なの。でないとライターなんて務まらないのです。」

出されたカップを素直に受け取って口につける。

鼻をかすめるコーヒーの香りにほだされて飲む一口目は懐かしい大好きな味だった。

それだけで自然と笑みがこぼれる。

そして店から貰ってきたパン・オ・ショコラをかじってまた幸せな笑みを浮かべた。

「うーん、おいしー。」

肩をすくめて顎をあげる仕草は昔から変わらないリースの癖だった。

美味しいものを食べた時の幸せサインは子供のまま、なんとも愛らしい一面だ。

実家の味に触れて幸せそうに微笑むリースを目を細めて見つめていた母、トゥーリはリースの手元にあるオーナメントに気が付いた。

「まあ、懐かしいオーナメントね。」

トゥーリの言葉にリースは目を大きくした。

「お母さん、知ってるの?」

「コースケのお土産でしょう?ほら、日本のちりめん。よく覚えてるわ。」

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