さよなら魔法使い
「ジベルと別れるとき…最後に手を繋いでいたの。」

リースは彼女の右掌を見つめて呟いた。

おそらく最後に手を繋いでいたというのは右手、彼女がいま思い出している記憶の中では魔法使いと呼ばれているジベルは彼女の右隣にいたのだろう。

「この手を離したら…もう二度と会えなくなるって思った。気休めの言葉なんてなかったの。彼は魔法みたいに消えてしまったのに…少しずつ消えていく手の温かさも全てが鮮明で魔法なんてないって思った。」

軽く握られたリースの右手をトゥーリも見つめている。

切なげに目を閉じているリースの胸中を思うと何もかける言葉が見つからなかった。

「でももう、あれは魔法だったんだって思うことにするつもり。その為に帰って来たのよ。」

「そう。」

そうよ、大丈夫だという気持ちを込めてリースは無理やりにでも笑ってみせる。

それは彼女の精一杯の強がりと、勇気を含んだものなのだとトゥーリは理解した。

「ね、魔法使いの思い出話でもしない?」

「いいわよ。」

リースの提案にのることにしたトゥーリはお菓子の籠を机の真ん中に置いて向かい側に座った。

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