ネージュ【短】
「その可愛い子は彼女?」



彩矢<アヤ>さんが、わたしを見て微笑む。



「うん、そうだよ。夢叶ちゃん」



「わぁ、名前まで可愛いのね!」



彩矢さんの、その笑顔。



ふわりとしたパーマに、胸元が大胆に開いたカットソーワンピ。



同性から見ても、見とれてしまうくらい素敵だ。



「そっちの男性は彼氏?」



「そうよー、陣っていうの」



陣<ジン>さんは、印象的には誠実な人?



背が高くて、メガネを掛けている。



「どうも」



そう言ってわたしたちに会釈してくれた声は、優しい低音ボイス。



陣さんもニコリと笑い、笑えてないのは自分だけ。



きっと今、わたしの心の中を見る事ができたら、もう嫉妬だらけで真っ黒だ。



「ねぇねぇ、光輝。番号教えて?わたしスマホ壊しちゃってさぁ」



そう言ってバッグからスマホを出した彩矢さん。



「うん、いいよ」



何の躊躇いもなく光輝くんはポケットからスマホを出して、彩矢さんに渡した。



チラリと陣さんを見たら、バチッと目が合った。



陣さんも…、嫌なのかな。



何だかこれ以上二人を見ていたら、嫌なわたしが出てきそうでガタリと席を立った。



「夢叶ちゃん?」



「あ、あの。わたしお手洗い行ってきますっ」



光輝くんの目は見ずに廊下に出た。
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