ネージュ【短】
「泣いてるの?」



そう聞けばフルフルと首を横に振った。



「こっちおいで」



ボクが手を広げれば、素直に顔を胸に埋める。



「夢叶」



ボクがもう一度名前を呼ぶと、遠慮がちに顔を上げた。



暗くても瞳が濡れているのが分かって、不覚にもドキリとしてしまう。



「キス、したい」



夢叶ちゃんはビクリと肩を揺らすも、覚悟を決めたのかゆっくりと目を閉じた。



彼女に近付き、チュッとリップ音を鳴らしすぐに離れる。



夢叶ちゃんは何度も瞬きをして、恥ずかしそうにしていた。



「もう一回する?」



ボクの言葉に、目を大きく開け驚くもコクンと小さく頷いた。



そんな彼女を見て愛しさが込み上げ、もう一度キスをした。



「夢叶ちゃん、さっき彼と何話してたの?ボクには言えない?」



どうしても気になった。



彼に夢叶ちゃんを触られたことよりも、どうして泣いたのか。



「……光輝くん。キスも、何もしてくれないから」



小さく呟くように聞こえた声。
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