天使のラプソティ~声になる~
「・・・・・先生は、あいつにどう接してます?」
「ん?」
俺はカップの中でゆれる牛乳に視線を落とした。
「声が出ないやつって、どういう風にしたらいいんスかね?」
先生はふうん、とあいずちを打った。
「それは、あの女の子のことかい?」
俺は過剰に体をびくっとさせた。
「・・・・・知ってたんですか?」
「昨日あの女の子の様子を見てたら、何となくね。そうなんじゃないかと思ったんだよ」
そっか。
普通は気づくものなのか。
俺は歌のことに夢中で気づかなかったな・・・・。
「・・・・・どうしたら良いと思いますか?」
先生は黙ってゆっくりとホットミルクを飲み干した。
病院内に貼ってある昨日のポスターを指で追った。
「・・・・・恐怖で鳴けなくなった動物に1番効くのは優しさだよ」
先生は写真の猫を指差した。
「だから私はこのこに精一杯誠意をつくすよ。人の手の優しさに包まれれば、いつかは恐怖が和らぐはずだからね」
先生のしわがれた声が不思議とよく通る。
耳に離れない。
「人間も同じではないのかな」
俺は黙った。
その瞬間、扉が開いた。