天使のラプソティ~声になる~
「やあ、来てくれたんだね」
先生が嬉しそうに声をかけた。未央だった。
走ってきたのか、未央は息を切らしてた。

「・・・・よっ」


俺は何事も無かったように振舞う。
声をかけると、未央は遠慮がちに頭を下げた。


「二人とも本当にありがとう。さっきあのこの写真を撮っておいたんだ。どれがいいかな?」
先生は印刷した写真を俺らに見せた。

十枚くらいある。特徴がわかりやすいように、いろんな角度から撮ってあった。

俺は順番に写真を見回した。

「これが良いな」

言って指を指したのと同時に、未央の指が同じ写真を指差してた。

俺は未央と顔を見合わせた。


未央がきょとんとして俺を見る。
鳥のように首をかしげた。






「・・・・ぶっ」
俺は思わずふきだした。

「息ぴったりだねぇ」
先生も笑いだした。

未央はきょとんとしたまま顔を赤くさせた。

「じゃあこれを使うよ。悪いけど、パソコンに打ち込むまで待っててくれないかい?」

「大丈夫です」
未央もうなずいた。

先生は病院の奥のほうへ行ってしまい、俺らは二人きりになった。
未央が気まずそうに下を向く。

そわそわと制服のスカーフを結びなおしたりしてる。

「・・・・・・・・」


何か言わないと。


「・・・・・動物、好き?」
未央は小さくうなずいた。

「・・・・そっか」


話はすぐに終わった。


俺がぎこちないから、未央も困ってるんだろう。
俺が今迷ってるから。




俺はどうしたいんだろう。


俺が未央に近づいたのは、また歌ってもらいたいからで。

あの歌声が忘れられなくてしつこく近づいたんだよな。


でも今は歌だけじゃなくて

未央と話したいとか、何かしてやりたいとか

いろいろそういうのがあって・・・・・

「・・・・・・・」





俺は鞄から使ってないノートを取り出した。
最初のページを開いて、シャーペンと一緒に未央に差し出した。

「やるよ」

未央はぱちぱちと瞬きして戸惑っていた。
俺が更に前に突き出すと、未央はおずおずと受け取った。

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